「ほしのうた」をミクに歌わせるまで(その1・基本方針)

 先日作成した「ほしのうた」ですが、アップした際にも書いたように、制作にはかなり苦労しまして。折角なのでメモを残そうと、wikiの方にほしのうたのページを作ったのですが、書きたいこともいろいろあってとても一度に書けそうもないので、今回は試みも兼ねて、こちらのブログに思いつくままメモ的に書き散らしていき、後でwikiの方にまとめるという方法を使ってみたいと思います。

 少々長く、かつVOCALOIDを使っていない方々には全然参考にならない話になりますが、なにとぞご容赦のほどを。


 さて。まずは初音ミク調整のための基本方針について書こうかと。
 初音ミクの調整、一般には「調教」とも言われていますが(^^; その方法は多種多様です。楽譜と歌詞どおりに打ち込むだけの、いわゆる「すっぴん」から、実際に人間が歌っている音をデータ化し、それに合わせて調整する方法まで、本当にいろいろです。
 私の基本的な調整方法は、「あなたとならば」までについては、直線ツールを使用し、鋸型のDYN*1エンベロープを描くという方法(もしくは、STARBOWのように無調整すっぴん)でした。この方法の利点は、使うのが直線だけなので、マウスやタッチバッドでも簡単に作業できるという点です。
 しかし、「ほしのうた」ではその方法を捨て、新たな方法で挑戦しています。今回取り入れたのが、すべて曲線でエンベロープを描く方法。これを初めて試してみたのが、「星屑シャワー」です。星屑シャワーは、基本的にすっぴん無調整を前提に作ったものだったので、あまり調整はしていないのですが、声に丸みを出すために、音の出だしの部分のDYNを少し下げています。この調整をフリーハンドで行ってみたところ、結構手軽かつ予想以上にいい感じに仕上がったので、それに味をしめて、「ほしのうた」でも使ってみたのです。
 ただし、フリーハンドでの調整が簡単にできるというのも、「ペンタブレット」を使っているというのが前提です。これがなかったら、とても「手軽にフリーハンド」などということはできません。この方法にペンタブレットは必須です。今回もすべての調整をペンタブレットで行っています。ちなみに、使っているペンタブレットは、こちらにも書きましたが、ワコムのBAMBOOというものです。


 DYN以外のパラメータの調整方針については、次のとおり。
 まず、DYNと同様に音量に影響を与える系統のパラメータとして、BRI*2とOPE*3ですが、いずれも曲の雰囲気作りに利用することとしました。特にBRIについては、曲全体の流れの中での強弱に合わせて強いところは大きく、弱いところは小さくしています。OPEは、上下させると声質が結構変わるので、雰囲気だけでなく声質の調整にも使っています。
 PIT*4は、今回はあまり調整していません。声の立ち上がりをやや低めにしたり、長音の最後を下げ気味にしたりした程度です。そのほか、ミクの声が全体的に微妙に低めであることから、全体的に0より若干だけピッチを上げています。
 今回多様しているのが、POR*5。これは、ポルタメント(前の音から次の音へ流れるように音程が変化していくもの。ある意味自動ピッチベンド)の始まる位置を調整するパラメータで、小さくすると前へ、大きくすると後ろへずれます。これだけだと何がどう違うのか分からないと思うので、もう少し具体的に説明すると、例えば、「ほ〜し〜」と歌うときに、それぞれの音程が「ミ〜ド〜」だとすると、PORが0ならば、「ほ(ミ)〜し(ド)〜」となるところ、

 PORを小さくすると、「ほ(ミ)〜お(ド)し(ド)〜」となり、

 PORを大きくすると、「ほ(ミ)〜し(ミ)い(ド)〜」となります。

つまり、「ほ〜し〜」と発音するタイミングと「ミ〜ド〜」と音程が変化するタイミングをずらすことができるのが、このPORというパラメータです。これをうまく調整すると、表情豊かな声になります。特に、今回のようにテンポが遅めの曲の場合には有効です。


 その他、アクセントやディケイ、ビブラートなども調整対象としては重要なのですが、今回はあまり調整していません。それ以外のものでもう力尽きてしまって(^^; アクセントやディケイはある程度DYNの調整で代用可能ですが、本当はビブラートはもう少し自然な形で調整してあげたいところではあります。


 とりあえず、長くなったのでこの辺で。

*1:ダイナミクス・音量

*2:ブライトネス・声の明るさ

*3:オープニング・口の開き具合

*4:ピッチベンド・音の微妙な高低

*5:ポルタメントタイミング・ポルタメント位置の調整